「元気 台湾」

−はじめに(台北稲門会HP編集部より)−
本文章は台北稲門会会員の村上克男様が台湾で見たことや感じたことを、日本の久喜稲門会様へご紹介している記事です。「元気 台湾」をアツアツふーふーで息をかけながらご賞味ください。
村上様、掲載をご了解頂きましてありがとうございました。久喜稲門会様ますますのご発展をお祈り致します。

元気 台湾 久喜稲門会会員 村上克男様(台北稲門会)
第1回「元気 台湾」 2003.03.09

 「いらっしゃい まーせー」 特徴いっぱいのイントネーションと大きな声。30分も行列を待ってテーブルについた途端、湯気を昇らせたセイロが目の前に運ばれてくる。アツアツにふーふー息をかけながらどんどん口へ放り込む。ここは至福のショウロンポウ(小籠包)屋ティンタイフォン(鼎泰豊)、台北一の有名レストラン。

 久喜稲門会の皆様こんにちは。私は仕事の関係で台湾の首都台北に来ています。昨年四月にこちらに来て一年になりました。台湾は日本人旅行者に最も人気のある国の一つで、その中でも食べ物は最大の目的。ティンタイフォンはその名が旅行者に最も知られた人気店です。ショウロンポウは、中身の肉あんを全部皮で包み込んだような一口大のシュウマイというかあるいは形を丸くした蒸餃子のような飲茶料理。ここはおいしいだけでなく若々しいウエィトレスの元気溌剌な声とテキパキした配膳で店に来ただけで元気を分けてもらった気分になりまうす。

 最近でこそ経済にやや陰りがでてきましたが、お構いなしに台湾人はとても元気。その元気を皆様にも差上げたく、台湾の風土や人々の生活、躍進する経済と台湾人の企業意識、料理や盛場の様子など現地から連載でお伝えします。

第2回「食堂」 2003.05.24

 台湾の街を歩いていると食堂だらけ。あちらもこちらもどれもこれも客で溢れている。夜市と呼ばれる狭い商店街は日本のアメヤ横丁みたいだが、並んでいる店の多くが食堂でそれも扉もない屋台同様の店が圧倒的に多い。家族連れ、若いカップル、友人仲間たち。台北駅前の見抜き通り懐寧街では三百メートルほどの町並み両側に食堂が36軒あり、食堂以外の店が29軒しかない。食堂についで多いのがコンビニ5軒、旅館4軒、銀行4軒、薬屋3軒。コンビニを含めると食べ物系で全体の63%を占めている。牛肉麺、水餃子、果実汁、豚角煮飯、自助惣菜、三明治(サンドイッチ)、鳥唐揚、まことに台湾人は食べてばかりと感心する。

 台湾人の食べることでの特色は二点。ひとつは注文の仕方。一気にごっそり注文しいっぱい食べて必沢山残す。残ったものはそのまま捨てられる。もったいないという気はないらしい。一向にお構いなしである。材料が豊富で安い、台湾は農作物が豊富なのだ。気候が暖かく土地が肥えている。周りの海で採れる魚介類も豊富。もうひとつは外食である。街に食堂が溢れる最大の理由は台湾人の外食好きだ。一日3度の食事が全部外食というのも珍しくない。主婦が家で全く炊事をしないというのもこれまた珍しくない。

 炊事ができない女は嫁に行けないというのは日本のことで台湾では問題にならないらしい。共働きが多くため女性が家事を担うことができない事情もある。それにもともと外食産業の発達があった。自宅で食事を作るより外食のほうが安上がりというのがアジアの各国同様台湾でも当たり前。食堂は大量生産だから家庭での少量生産よりコストが低いのは当然である。日本で外食が高いのはレストランのショバ代が高いためだと私は思う。屋台のようにショバ代が安ければ料理のコストは材料代だけだから大量生産のメリットが一気に効いてくる。これと比べて日本のレストランでの食事がなんと高いことか。

第3回「暑さ」 2003.06.02

 4月に入ると台湾は夏になる。それまでの春から一気に日中の気温が30度の猛暑になる。これから10月までが長い夏の季節。北回帰線が国のほぼ中心を東西に横切っているから太陽が人の頭の真上にきて、夏至の日は自分の影が足元に小さくなってほとんど無いに等しい。この日差しに頭のてっぺんを射られると灼熱とはこのことかと実感する。

 台湾でもゴルフが盛んだが夏場は早朝のスタートが一般的である。5時からスタートし一ラウンド18ホールを途中休まず一気に廻り10時には終わってしまう。午後3時過ぎに開始する場合もある。いずれも暑さを避けるためである。従い日中はだれもコースにいない。台湾着任直後で様子が分からずに11時からスタートをしたときは、1番ホールのテーグラウンドに立ったときに既に暑さで体がふらふらであった。全くゴルフにならず、それでもなんとか18ホールを終えたものの翌日の日曜日は一日中ベッドから立ちあがれなかった。

 台湾人は当然のことながら慣れているので暑さに強い。直接的に強いので無く、逃げ方を知っているのだ。その一つが昼食後の昼寝。会社でも学校でも昼食後の小一時間を机にうつぶせになって休む。ビルの警備員も椅子を並べて1時間寝る。そうでもしなければ体力が持たない暑い地域の人の生活の知恵だろう。また町並みの歩道がアーケードになっているので日差しを防げる。このアーケードは建物自体がそれを形作っている。建物の二階が張り出していてその分一階が引っ込んだ形になりそこが歩道になっている。ほとんどの建物がこの形になっているので、雨を避けるにもちょうど良く傘を持たずに街中を歩ける。

 日差しよけと雨よけの一石二鳥だ。

第4回「台北校友会」 2003.12.13

 台湾にも早稲田大学校友会がある。台湾における最も古い日本の大学の校友会として1950年から台湾出身の校友間の親睦を続けている。それが昨年(2003年)台湾政府から社団法人に認定され日本早稲田大学台湾校友会の再出発になった。12月13日、台北随一のホテル圓山大飯店で挙行された成立大会には日本から白井総長をお迎えし、アジア太平洋地域との連携推進に向けた大学の意欲と台湾の重要性、そして活躍する台湾人校友に対する感謝の挨拶をいただいた。講師退任後もジャーナリストとして活躍している金美齢さん初め230名の出席があった。翌日には観光地参観バスツアーとゴルフ大会の2種類の記念行事が催され、観光コースは家族同伴で台北近郊の景勝地三峡老街の散策と鶯歌での陶器見学、ゴルフ組は台湾きっての老舗淡水ゴルフ場で30名を集めて賑やかにというより騒々しく開催された。ところで実際には1,000人を超える台湾人OB、OGがいるらしい。しかし若年層の参加が少なく校友会の悩みは日本と同じである。

 この校友会とは別に日本人校友台湾在住者の親睦会がありこれを台湾稲門会と称している。企業から派遣された駐在員と台湾に住み着いてしまった日本人、それと特に日本人との付き合いが好きな台湾人OBが参加している。台北市、台中市、高雄市の三市にそれぞれ組織があり、私は台北稲門会に参加。著名人を招聘しての講演会(2年前には陳水扁総統を招いた)、新年/忘年会、大学関係者や学生訪問者の歓迎などの行事がある。昨年10月国際ボート大会に早稲田ボート部が参加したので、稲門会は貸切バスで応援団を繰り出しエールを送り紺碧の空を歌って激励した。この様子が台湾のテレビで放映され応援は早稲田が一番との評判を得たがレースは21チーム中14位だった。年間の最大行事は三田会とのゴルフ台北早慶戦。両校の意地をかけ激戦を展開、現在まで10勝14負1分。このところ早稲田は4連敗を喫しそれまで五分であった成績を汚している。連敗を跳ね返そうと前回は本戦を前に秘密練習を行い各自の弱点を改良して万全の体制で臨んだはずだったが、最有力の2名が駐在終了で急遽日本に帰国してしまい結局また苦杯をなめた。それぞれのチーム上位10名の合計スコアで勝負を競うため何人参加してもかまわず、実力ある人をどれだけ多く参加させるかにかかっている。このときは合計スコア差7打であった。早稲田チーム全員が1打ずつ向上することを会長から厳命され、次回は必ず雪辱を遂げることを誓って解散した。

 台北稲門会の会員数は75名。台湾に住んでいる早稲田OB、OGはおそらくこの5倍はいるのではなかろうか。稲門会を知るには知人から紹介をうけるか日本食堂などへ配布されている現地案内書で会の存在を知るか、いずれにしても偶然に頼るしかない。なかなか存在が知れ渡らないのである。しかし一度出席すると会のよさがわかりずっと長く参加する人が多い。台湾での稲門会が忘れられず日本へ帰国した会員仲間で日台稲門会の会合を開いているそうだ。


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