「シャツの外出し禁止です。」をめぐる議論を総括して2003年1月20日
山田敦(S59政経) 結論から申し上げますと、やはりゴルフ場でのシャツの外出しはアメリカ、イギリスなどゴルフ先進国だけでなく万国共通にNGとされている行為であることは間違いありません。 国やゴルフ場によっては許されるというような種類のことではなく、ゴルファーであれば知っていて当然とされているエチケットと言っても言い過ぎではないでしょう。 少なくともプレー中はそうであるべきです。 繰り返しになりますが、これは全くその是非を問うような問題ではなく、世界中のゴルファーの間で禁止行為と認識されているマナー・エチケットの問題なのです。 そのことを認識できているか、知らずにいたかだけの違いです。 それではこのことを具体的に検証してみましょう。 ヤフーUSAでdress code for golfと検索すると何と138,000件がヒットします。 その多くは世界中のゴルフ場の英文ホームページがそのゴルフ場におけるドレスコードに関して説明しているページです。 あるわ、あるわ、一般のゴルフ場からロイヤル・メルボルンなどの超名門コースまで、数多くのコースがシャツの外出しをハッキリと禁止行為と明記しています。 ハワイのようなリゾート地のコースでも事情は全く同じです。 原文はこんな感じです。 Shirts: Either turtleneck or collared golf shirts are acceptable. Crew neck shirts and T-shirts are not permitted. Shirtsleeves may either be short or long and shirts must be tucked in at all times. とてもじゃないけれど全部に目を通すことなどできませんが、これは決して門戸の狭い排他的な名門コースだけに限った話ではありません。 確かにシャツの外出しを明文化していないコースも多くありますがこれは敢えて書くまでもなく「みなさんおわかりでしょう。」ということだと思います。 それでも納得が行かないという人がもしもいらっしゃればこんなのもあります。 アメリカでジュニアゴルファーを育成しジュニアツアーを運営する機関として有名な Robert Trent Jones Golf Trail / Junior Golf Associationという団体があります。 Robert Trent Jonesの何たるかは今更申し上げるまでもないでしょう。 やはりここでゴルフを学ぼうという子供たちを対象に次のようにドレスコードを設定しています。http://www.rtjjuniorgolf.com/rulz.htm Collared shirts must be worn and tucked in at all times. さて、一連の論争の中で私も答えに窮する面白い質問がありました。 「PGAツアーでハワイアンシャツを外出しでプレーする選手もいるではないか。」 掲示板では「本来裾を出して着る服なのでこれは特例と認められているのでは?」とお答えしたと思うのですが、これにも明確な回答が見つかりました。 The Hong Kong Golf Clubのドレスコードから。 Shirts must be worn inside trousers / shorts at all times with the exception of Hawaiian shirts and other forms of National Dress. http://golf-asia.com/hksar/hkgolfdresscode.html これだけの名文、おそらくR&AやUSGAといった権威ある団体が過去に発表した文章からの引用と推察します。 ハワイアンシャツやバッテックの開襟シャツは民族によっては伝統的にフォーマルな服装でスソを出して着るのが正統。 それがゴルフの世界でも特例として認められているわけです。 何と懐の深い配慮でしょう。 昨年の全米プロ覇者のR・ビームがハワイアンシャツでプレーしているのをテレビで見ましたが、実はこれ、だらしないのではなく全く正統な着こなしであったわけです。 これをポロシャツの外出しと混同してはいけません。 いかがでしょうか。 これだけ材料をそろえて検証すればもう反論のようなものはないと思うのですが。 これらのホームページを見てみると結構どこの国もゴルフの服装規定には厳格なのだということがわかります。 半ズボンの時にはくソックスは必ず白だとか、くるぶしの上5インチ以上短いパンツはダメだとか。 半ズボンはtailoredなものという規定も多くあります。 これは作りが背広仕立てになっているチノパンツなどと理解すればよいでしょう。 だからストリートバスケットやスケボー少年がはくようなダボダボなものやウエストにベルトのないものなどはダメだということです。 ジーンズ、カーペンターパンツなどは論外です。 またすべて清潔な(clean)と服装やクツを規定しているところも多いようです。 全く手入れもせず、前にプレーした時の泥や芝がそのまま乾いてこびりついたような不潔なシューズでのプレーはダメということでしょう。 しかし結構いますこういう人。 まず無責任な雑誌やウエアメーカーの広告などの影響があります。 また日本人ゴルファーの多くはゴルフを始める時点でマナー・エチケットの習得がなおざりになっているからでしょう。 しかしもっと大きな問題としては最近の日本の大人が若い人や後輩にしっかりとはっきりと言うべきことを言わない、伝えるべきことを伝えなくなってきているからではないでしょうか。 日本では元々エチケットやマナーは明文化するものではなく親から子へ先輩から後輩へ伝承するものとされてきました。 かつて日本は明文化されたドレスコードなどなくとも秩序が保てる社会だった。 ここに来てそれが通用しなくなってきたのではないでしょうか。 スソ出しの横行はその表れともとれるわけです。 それはゴルフのマナーやエチケットに関した話だけではありません。 基本的な生活習慣、日常の言葉使い、目上の人間を敬うことの大切さ、、、注意されると「ウザイ」と凄まれるから結局大人も何にも言わずに済ませてしまう。 少し飛躍し過ぎましたが、なぜか私にはそう思えてなりません。 もちろんシャツのスソを出すか出さないかなんて全く些細なことでしょう。 ゴルフ場にはもっともっと恥ずべき行為が横行しています。 芝生にタバコの吸殻を平気で捨てる、プレー中に大声で騒ぐ、腹立ち紛れにキャディーさんを叱責する、などなど。 これらは年配者、若者を問わず昔からあります。 私はこういう行為に対して少なくとも仲間同士では気が付いた時にお互い注意すべきだと思います。 そうでないと紳士淑女のスポーツたるゴルフの秩序や伝統(表現が古すぎる?)が次から次へとなし崩しにされ、最後はゴルフ場が下品なレジャーセンターになってしまいかねません。 ゴルフには確かに一見面倒な約束事がたくさんあります。 しかし私はマナーやエチケットの正しい理解はゴルフというスポーツの偉大さに触れるために必要欠くべからざる身支度のようなものと考えます。 ですから服装などはなるべくキチンとすべきだと思います。 「そんなの気にしてたらエンジョイできない、やりたいようにやる。」と若者らしくうそぶくのは簡単です。 ゴルフを単なるレジャーとかスコアを争うだけの競技ととらえるならそれでもかまわないかもしれません。 しかしすべてのゴルファーはゴルフを始めたその日からゴルフの良き伝統や秩序を守っていく責任があるとも思います。 またゴルフの持つ深遠な魅力をよりよく味わい長くゴルフとつきあっていくためには私たちは常に謙虚であるべきだと思うわけです。 <追記> |